最高裁判所第二小法廷 昭和27(オ)572 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士矢部善夫、同小林亀郎の上告理由について。
上告人の本件反訴の請求原因は、要するに、被上告人は電話局の許可を受けない
で本件事務室内に電話機を取りつけておいて、恰も正当の許可があつて架設された
ように装い、電話附事務室の形を整えてあつたので上告人は事務室内で通信のでき
る便利な事務室であると誤信させられ本件賃貸借契約を締結し金一九万円を権利金
名義で騙取されたのである。すなわち、本件契約は被上告人の詐欺による不法行為
によつて成立したものに外ならないから被上告人は上告人の被つた金一九万円相当
の損害を賠償する義務があるというにあることは原判決の引用する第一審判決の事
実摘示により明かである。即ち上告人の反訴請求は不法行為による損害賠償を請求
するものであつて不当利得の返還を請求するものではない。ところで原審の反訴請
求に対する判断は本件賃貸借契約は上告人が本件家屋の階下に架設されてある電話
を利用することをもふくむ契約であつて二階の本件貸室に電話を架設して上告人に
これを利用させることをふくむ契約ではなく従つて被上告人が上告人を欺むいて本
件賃貸借契約を締結せしめ且つこれによつて一九万円の権利金を交付せしめたもの
でないというのである。従つて原審は反訴請求の原因たる不法行為の成立を否定し
たのであるから上告人の反訴請求はこの点において排斥を免れないのである。原判
決は右一九万円の権利金の交付が不法原因の給付であると説明しているが、前に説
示したとおり本件反訴の請求は不法行為による損害賠償の請求で不当利得の返還を
請求するものでないから不法行為の成立を否定した以上更らに右権利金の交付が不
当利得となるかどうかはこれを判断することを要するものではない。従つて原審の
- 1 -
右判示は蛇足の説明に過ぎない。そして論旨は右蛇足の説明に対する非難に外なら
ないから採用の限でない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 霜 山 精 一
裁判官 栗 山 茂
裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 谷 村 唯 一 郎
- 2 -